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DeathPlayerHunterカノンの小説を移植。自分のチェック用ですが、ごゆるりとお楽しみください。
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DeathPlayerHunterカノン[ゼルゼイルの旅路] EPISODE5
運命の分かれ目は、近い。
 
 
 

「ルナー? 入るわよー?」
 ノックをしながら呼びかけると、間延びした返事が返って来た。軽食の乗ったトレイを片手に持ち替えて、ノブを回す。
 砦の扉というものは、どこもかしこも重いもので、カノンはトレイが通るほどドアを開け放つのに体重をかけなくてはならなかった。
 入ると同時に鼻先を掠めるのは、湿った石煉瓦と、紙と墨の匂い。
 背丈ほどにも積み上がった蔵書の山に、カノンは一瞬、彼女の姿を見失った。何せ、部屋の中にあるはずのデスクが本と投げ出された羊皮紙の山で霞んで見えるのだ。
 とりあえず、速攻で集められるだけの魔道関連、歴史関連の書を集めてくれとルナが言い出したのが昨日。ティルスが手配したのは、最も近い町に位置する図書館だった。
 それこそ秘蔵室や禁書架の中まであさり、とりあえずはこれだけ。『とりあえず、これだけ』の量がこれだ。全体量は一体どれほどのものか。
 さすが、精霊都市と揶揄される魔道都市ルーアンシェイルと並ぶほど、伝承の多い土地ゼルゼイル。
 立て付けのあまり良くない椅子に腰掛けて、振り返ることなく机に向かう幼馴染の姿を見つけて、山を倒さないように気を使いながらデスクへ辿り着く。
「ほい、食事。軽いやつだけど」
「ん、さんきゅー」
 羽ペンをインク壺に浸しながら、彼女は軽い返事をした。
 ちょうど、きりが良かったのだろうか、疲れた溜め息を盛大に吐き出すと背もたれにもたれて、大きく伸びをする。
「……別に、あたしも手伝えるわよ? 魔道文字とか古代文字なんて、狩人時代に死ぬほど覚えたし」
「気持ちだけで結構。あんたとレンには、十分なコンディションで護衛を頼みたいんだから、こんなデスクワークで体力を使うなんて馬鹿な真似はしないように」
「……ったく」
 強情な、と呟いて、カノンは備え付けのベッドに腰掛ける。当然、そこにも紙の束が転がっていたので、避けて座る。
 ルナはトレイの上のサンドイッチに手を伸ばし、口に加えると、もう片方の手で机の隅に放っていた蔵書を引き寄せる。
「あたしが言えたことじゃないけど、あんまり無理すんじゃないわよ」
「その言葉をそのままそっくり返すわよ。客将の筆頭だからって、軍人じゃないんだから、あんたは頑張る必要ないんだからね」
「そういうことじゃないでしょ!?」
 つい、声が荒くなる。一瞬、驚いた彼女がサンドイッチを取り落としかけた。
 大きな猫目に、まじまじと見つめられて、やっと我に返る。
「あ、う……ごめん」
「……まあ、いいけどさ」
 ルナは無言でサンドイッチを半分だけかじると、トレイに戻した。同じトレイに乗っていた湯気の立つマグカップを手に取った。
「……あの、さ」
「何?」
「聞いちゃいけないのかもしれないけど……。
 その、大陸の魔道師って、普通、あんまりゼルゼイルの伝承になんか詳しくないじゃない……。
 何で、ちょっとなのかもしれないけど、知ってたの……?」
「……」
 おそるおそる。
 返答を求めているのに、その返答を聞きたくないような表情で、カノンは口にした。
 するり、とルナの顔から表情が抜ける。その真顔に、カノンは慌てて訂正を口にしようとするが、彼女はそれよりも前に苦い笑みを作った。
「たぶん、あんたの想像通りだと思うけど?
 ……月の館で研究、いや、研究とは言えないわね。研究の内容を聞かされたから、かな」
「そ、そっか。やっぱり、『月の館』で……」
「まあ、でも『月の館』だって馬鹿じゃないわ。ゼルゼイルに纏わる直接的な研究なんかやってなかった。むしろ、ゼルゼイルに関係する研究はすべからく、伏せられていたと言っても過言じゃないわ」
「へ……? じゃあ、何で……?」
 ルナは曖昧に声を漏らす。言うべきか言わないべきか迷ってる、というよりは、口にするのが些か億劫に感じているように見えた。
「……昔ね。とんでもない馬鹿がいたからよ。
 禁書、禁句、禁止。そんなものを聞けば聞くほど、見れば見るほど、深く掘りたがる……。人間の三大欲求の中の食欲が、知識欲に摩り替わってんじゃないか、って思えるくらいの馬鹿がいたのよ」
「あ……」
「どこから知識を引っ張って来たんだか知らないけど……。
 まるでガキみたいに話し出すと止まんなくてね。特に幻大陸の話は、三十回は聞かされたかな……。他にもいろいろとね。ま、素直に聞いてたあたしも大概、馬鹿だったんだろうけど。
 だから、良く覚えてただけの話」
「……」
「あんな魔道歴史の宝庫が放って置かれていいはずがない、って。いつか、内戦が収まったら、自分で出向いて調べ上げてやる、ってのが口癖だったっけか……。そのときは雇ってやるから、せいぜい助手として付いて来い、って……。
 ははは、ほんとに皮肉なもんよ……。そんな戯れの夢物語が、こんな形で叶うなんてね……」
「……」
 何も、言うことが出来なかった。いや、何を言えと言うのだろう。
 奥歯を噛み締める。あまりにも言葉を持たない我が身を呪いながら、カノンはこっそり拳を握り締めた。
 大きな、息が漏れた。
 浮かんだ笑みは、もうほとんど、笑みに見えなかった。
「……大丈夫?」
「……平気。ありがとね」
 礼など、言われるような立場じゃない。だって、カノンは今の今まで何も出来なかった。何も出来なくて、たった今この場でも、彼女の心傷を抉るような真似しか出来ないのだ。
 悔しい。口惜しい。今、この場にあの薄笑いを浮かべた白子の魔道師がいたら、全力で殴り飛ばしてやれるのに。
「……カノン」
「ん?」
「まあ、確かに他人には好かれない奴よ。好かれようとも思ってないから当然なんだけど。
 けどね、あいつの中に、本来あるのは探究心だけ。真理・真実が欲しいだけ。
 間違っても、あのWMOのお坊ちゃんみたいな思想の人間じゃなかった。もっと幼くて、ある意味で純粋な奴だったわ。……少なくとも、当時はね」
「……」
「安心して。
 この五年間で、何があったのかは解らない。
 でも、あいつの頭は戦争の道具なんてちっぽけなものに使われていいものじゃないわ。それは……本人が一番よく知ってたはず。
 五年間で何かがあって……本気であいつが道を踏み外してるなら、目を覚ましてやらなきゃいけない。
 ……もし、出来なかったら――
 覚悟は、してるから」
「……」
 何の覚悟かなんて、聞くだけ無粋だった。カノンは自分の手を見つめる。錯覚、なのは解る。指先が、少しだけ赤く見えたことなんて。
 カノンは剣士だ。人の肉を斬れば、骨を砕けば、その感触が直に掌を襲う。
 だから尚更、その覚悟が悲壮すぎることを知っていた。
「……出来なかったら、いつでも代わるよ」
 否定も肯定もせずに、それだけを告げた。ルナは苦笑を浮かべながら、冷めたマグカップを煽る。
「ありがと。気持ちだけ貰っとくわ。第一、あんたにこれ以上そんなことさせたら、あたしがレンに殺されるし」
「?」
「ま、とにかく心配しないで。ここまで来たら、やることをやるしかないわ。
 ……あたしには、その義務があるからね」
 彼女はいつのまにか軽食をすべて片付けていた。ことん、とマグカップがトレイに置かれて、細い指が再びインク壺の中の羽ペンを握る。
「……あ、そうだ」
「?」
「いや、どうせあたしたちはルナと一緒に遺跡探索とか、それっぽいことやるんでしょ?」
「そうだけど?」
「だったら、さ。前、言ってたじゃない。ゼルゼイルで一番有名な伝説がどうのこうの、とか。
 あんたはそういう分野が本業なんだし、ちょっとかじっただけのあたしなんかじゃあ、大した助力にならないかもしれないけど……。
 それだけでも聞いて置こうかな、と思って」
 カノンの問いに、ルナはあー、と声を上げる。ペンから手を離し、腕を組み、眉間に皺を寄せる。
 やがて、ふっと肩から力が抜けた。
「まあ……そうね。話しといて損はないか。どうにしろ、知って置いた方がためになるんだろうし」
 くるり、と彼女はデスクから視線を外して、カノンの座るベッドへと向き直る。
「……ことの真偽は知らないわ。だから、今、ちょっとだけ調べた内容と昔伝え聞いたものを交えて喋るけど。
 全面的な信用はしないように。いいわね?」
 カノンが嫌に神妙に頷くのを見ると、ルナは満足そうに胸を張る。目の前にあった蔵書を引っ張り出すと、しおり代わりに羊皮紙の挟んであったページを捲る。
 出て来たのは、どこかで見たことのある――そう、ゼルゼイルの地図だ。しかし、数日前に見たはずのそれとは微妙に形が異なっていて、記された地名も一致しない。
「何年前かしらね。暗黒時代なんかよりもっと前のものよ――。
 堕天使ルカシエルは覚えてる?」
「あー……うん、まあ」
 カノンの表情が少しだけ苦い。
 堕天使ルカシエル。多くの神話に登場する、その崇められし天使の名を聞いたことのない者はいないだろう。
 かく言うカノンも聞いたことはある。
 ……いや、それどころか、むしろ。
 彼女――神話の神に性別をつけるのも奇妙な話だが――によって、神話の実在をまざまざと見せ付けられた一人だった。
「一年と半年前。あたしは魔族の中でも大きな力を持ち、筆頭と恐れられるヴァン一族の端くれに身体を明け渡したことがあった」
 こくり、とカノンの喉が鳴る。
 一年と半年前――。
 ルナは、『月の館』を襲撃したニード=フレイマー率いるある組織に身柄を拘束されていた。その組織が崇拝していたのが、他ならぬ、その魔族。名を絶空雷[ヴァン・シレア]、と言ったか。
「偶像崇拝。最初はね。
 でも、神話も魔族も実在した。古の欠片から復活した、ヴァン・シレアが、人間の器を利用してどんな猛威を振るうに至ったか――それは、あんたが誰よりも知っているはずよ」
「……」
 頷く。
 その魔族の存在は、一つの荒野を永遠の砂漠へと変えた。誰からも忘れられたような荒野だったからまだいい。
 あの場所がもし、人の賑わう町であろうものなら――
 記憶と、想像にカノンは身震いする。
「そのときに、助力してくれたのが堕天使ルカシエル。
 まあ、助力というのは似つかわしくなくて、彼女からすれば人に取り憑いた恥知らずな魔族にお灸を据えるのに、あんたたちを利用した、ってところなのかしらね。
 そのおかげであたしは、こうして人間やれてるわけだけど」
「……まあ、たぶん。神話は神話のままでいい、って思った覚えはある……」
 記憶の中で、六対の翼が広がる。いや、やめよう。なるべくなら思い出したくない。思い出したところで重厚な神話のイメージががた崩れになるだけだ。
 ふむ、とルナが一拍置いた。
「じゃあ、そのルカシエルがどうして堕天使になったかは?」
「えっと、確か昔、魔物と戦ってその魔物の血が白い六対の翼を黒く染めて……。
 それで神の国にいられなくなって離反した、ってお話だったわね。それくらいしか知らないけど」
「正解。ルカシエルは元々は、神の国では大天使だった。天使としては最高の位よ。
 その最高クラスの天使が、相対する魔族の象徴である黒い翼を持ってたんじゃ示しがつかなかった、っていうまあ、実に人間臭い、人間が喜びそうな、人間のための物語よ」
「?」
 ルナの言葉に含みがある。確かにそうだ。示しがつかないから首、とは何とも人間社会の片鱗を表した一説に見える。人間好みなストーリーだからこそ、その話は後世まで残されたのだろう。
「じゃあ、そのときに争った魔物、って何者か知ってる?」
「さぁ……? そんなところまでは」
「……ここからは上級魔道師内での一般説になるんだけど」
 カノンの眉がひくり、と動く。
「その魔物が実は、幻大陸の正体、ヴァン一族の長、――羅刹鬼[ヴァン・ラセツ]グライオンなんじゃないか、って言われてるのよ」
「へ? そうなのッ!?」
 カノンが素っ頓狂な声を上げる。古い知識を頭の隅から引きずり出して、整理する。
「えっと、幻大陸ってのは六千年前に沈んだ大陸の一部よね?
 かつて、西と東は陸続きになっていて、六千年前、移し身の術を会得していたグライオンはこの"世界"そのものと同化して、地上のすべて――歴史も、大地も、生命をも操ろうとした。
 それが失敗して、羅刹鬼[ヴァン・ラセツ]は大陸の一部に封じられて海に沈んで、その大陸の一部と共に眠り続けている――って」
「さすがカノンちゃん、優秀~。
 その通り。六千年前、羅刹鬼[ヴァン・ラセツ]は分化した大陸の一部と共に海に封じられた。
 で、ルカシエルが堕天したと言われてるのも、ちょうどその頃なのよ。これが偶然か、否か、って話になる」
「あ……」
「公式的な文書にちゃんと記されてるわけじゃないから、一説に過ぎないけど。
 ま、魔道師間ではこれが通説ね」
 顎に指を当て、彼女はほぼ断定のように話す。しかし、些か納得がいかない。
「けど、何でルカシエルの伝説には、魔物、なんて曖昧な書き方がされてるの?」
「んー……まあ、それは昔と今の信仰による文化レベルの違いじゃないかしらねぇ……。
 例えば、昔はもっと悪魔崇拝が力を持っていて、それじゃー、最強の悪魔が神サマに負けたことになって信仰上悪かったとか。もしくは神信仰にしたって、最高神が堕天ていうこと自体が、羅刹鬼[ヴァン・ラセツ]の名前を出すと屈して傅くような印象を与えた、とか。
 そういうところが人間のご都合主義なんだけど。よくあることよ。
 まあ、それはさておき。
 このとき、西と東、両方の大陸の狭間に位置するこのゼルゼイルっていう島国は、ちょっと魔道師内にとっては特別になって来るのよ」
「……幻大陸に関係する島、と見られる?」
 ぱちん、とルナが指を鳴らす。弾かれたように頷く彼女。
「ビンゴ! ゼルゼイルって大陸は、そのテの研究では、幻大陸の一部が浮上、もしくは沈む過程で分離した一部なんじゃないか、って言われてるのよ。
 そのためなのか何なのか、この地には多くの伝説・伝承が眠ってる。
 精霊都市ルーアンシェイルもそうだけど、昔からでかい伝説が一つあるところには集まるようにして小さな伝承が眠ってる。そういう伝承の中心は決まって神魔族が絡む。
 そういう特性なのかしらね。一度、魔力が集まったところには、また別の魔力が引き寄せられる。
 ゼルゼイルの場合、それを裏付ける最大の後発的伝承が二代鬼神伝説」
「鬼神?」
 カノンが復唱して首を傾げた。耳慣れない単語だ。
 ルナは少しだけ悪戯っぽく笑い、古びた地図の二点を指差す。
「ゼルゼイルの北西と東南。まあ、それぞれシンシア領とエイロネイア領なんだけど。
 二対になった神殿が存在するの。一方は北西に位置する神羅[ディーダ]、一方は東南に位置する冥羅[ヴィーラ]。
 それぞれにはそれぞれ一体の鬼神が奉られていてね。
 一方は護法鬼神ヴェネヅエラ。一方は滅法鬼神シャライヴ。二人の鬼神はこの地の善悪の均衡を保ってる、なんて言われてるけど。実際は違うわね」
「違う?」
 頷きながら、ルナはにやりと笑う。再び、別の蔵書を取り出しながら、年号を指差す。
「二人の鬼神がゼルゼイルの史上に出た頃と同じ時期にね。神話の歴史では同時に二人の神魔族が姿を消している。
 彼らはちょいと特殊な神魔族だったらしくてね。人の感情だの、想いだのに感応して、力を発揮する神魔族だった。まあ、明記はされてないけど、あんたの魔変換[ガストチャージ]みたいなものだと思うわ。
 だからこそ、人一倍人の動向やら、憂いやらにも敏感だった。
 戦争ばかりを繰り返していた自らの同胞、神々と、魔族たちに、そして人間そのものにも絶望を覚えた二人は、唐突に戦いの最中から姿を消した。
 神話側の伝承はこれで終わってるわ。
 でもね、この地の鬼神について調べてると――。
 護法鬼神は人の正の感情を司り、加護する。滅法鬼神は人の負の感情を司り、憂いを晴らす。
 人の想いが鬼神によって見初められるとき、かの者たちは再び蘇る。
 ……なんとなーく、接点があるじゃない?
 だから、姿を消してから二人の神魔族は、羅刹鬼[ヴァン・ラセツ]の残り香であるこの島に、帰属して自ら身を封じ、目覚めるときを待っている、なんて言われてるのよ」
「ふーん……。人の感情に……、ねぇ……。酔狂な神魔族もいたものね」
「まあ、神話の神とか悪魔ってのは、やたらと人間臭かったりもするし。人間の祖が神だ、とか言われる所以はそんなところにあるんじゃないかしらね。
 で、話を戻すけど。
 さっきも言った通り、幻大陸が沈んでから、ルカシエルは堕天するわけだけど。
 あたしはこれはただの堕天じゃないと思ってる」
「……?」
 ふと、先ほどのルナの言葉の棘を思い出す。彼女は椅子に座りなおして、脚を組み、腕を組んで胸を張ると、
「だってそうでしょ? 血で汚れたから解雇、なんて人間社会のリストラじゃないのよ?
 実際、彼女はその後も度々歴史に登場しては、人間に力を貸したり、魔族を倒したりしてるのよ。あのとき、あたしたちに手を貸してくれたようにね。
 彼女がそれをする益は何? もう天使ではない彼女に、善行の義務なんてないわ。
 じゃあ、何?」
「何、って……。 まさか、カミサマが人間が好きだから、とかいうんじゃないだろうし……」
 そんなまさか、とルナは息を吐いた。表情が緩んだのは一瞬で、すぐに真顔に戻る。
「あたしは、彼女は人間の世界にいるためなんじゃないかと思ってる。もっと言うなら、幻大陸の監視をしてるんじゃないか、って」
「幻大陸の、監視……?」
 何で、そんなことを? と問いかける。ルナは考え込むような仕草を見せて、苦い表情で口を開く。
「……神様が人間臭い、って定義で話をしちゃうけど。
 人間が人間を殺して、どこかに埋めたりしたとしたら、一番気になるのは何だと思う?」
「い、いきなり物騒になったわね……。そうね……やっぱり、誰かに見つからないか、ってことでしょうね……」
「そう。しかも、その死体は本当に死体だったかどうかも不安に思うわよね? 後で息を吹き返して、ゾンビよろしく出てくるんじゃないか、って」
「まあ、素人なら死んでるかの判断も難しいだろうし……って、ルナ……。まさか……」
 頷きながら、カノンも彼女が何を言おうとしているのか、大体の予想がついたらしい。訝しげに眉を寄せる。ルナはそれに頷き返す。
「……ルカシエル側の伝承によれば"魔物"は死んだことになってるけど。羅刹鬼[ヴァン・ラセツ]の伝承によれば、奴は封じられたとなってるわ。
 どちらが正しいかは解らないけど――
 自分の殺した相手を守り続けるのに、一番確実な方法は何か――
 答えは完全に息絶えて、誰も探そうとする者がいなくなるまで見張り続けることよ」
「……ちょっとちょっと」
 さすがにストップをかける。話が突拍子もなくなってきた。
「話が飛躍してるわよ、ルナ。何? ルカシエルは幻大陸の番人で、羅刹鬼[ヴァン・ラセツ]が――復活しないかどうか、見張ってる、なんて言いたいの?」
「……勿論、これはあたしの自説。一般論なんて言う気はないわ。そういうことも考えられないか、ってこと。
 大体、ここ六千年、幻大陸そのものの存在さえ魔道師たちの間では疑われてきた。
 まあ、言葉遊びだと思ってくれて構わないわ。ただ、堕天使ルカシエルが実在するなら、幻大陸と羅刹鬼[ヴァン・ラセツ]が存在してもおかしくないなー、と思って、離れた点を無理矢理線で結んでみた推論よ。それだけの話。
 調子に乗っちゃったけど、ゼルゼイルの幻大陸の話はこんなところかしらね」
 ぱたん、と目の前で蔵書が閉じられる。反動の風が、カノンの前髪を巻き込んだ。
 耳慣れない話を聞いたためか、少し頭がぼんやりしていた。その彼女に、ルナはくすりと笑いを漏らした。
 蔵書を片付けて、講義は終わりだと言うようにペンを握る。
 それにはっ、と気が付いて、カノンも慌てて立ち上がった。ルナの脇に置かれていたトレイを持つ。もうすっかり冷えていた。
「ごめん、大分邪魔したわね」
「いや、別に。必要なこともあったでしょうしね。
 もうちょっと……そうね。進行状況によるけど、たぶん、明後日あたり、出ることになるかもしれないわ。レンに伝えておいて。」
「うん、解ったわ」
 相槌を打って、来たときと同じように山の合間をすり抜けながら、ドアに向かう。ドアを開く寸前で、一度振り返ったが、そこでは小さな背中が、かりかりとペンの擦れる音を響かせるだけだ。
 こっそりと溜め息を吐いて、カノンは部屋を後に――しようとして。
「……カノン」
「?」
 逆に、呼び止められた。
「……ありがと。少し、気が紛れた」
「……」
 少しだけ、驚いた。けれど、ゆっくりと笑みを浮かべる。見えはしないけれど。
 言うべきではないのかもしれない。だって、彼女はもう十分以上に耐えて、必死になっている。けれど、せめてその背中をほんの少し押してあげたくて。
 彼女が求めるのは、評価ではなく、結果だと知っていたから。
「…………うん、がんばって」
「……さんきゅ」
 小さく、伝えた一言に。
 返った返事が、自然な優しさを纏っていたことを、信じて。
 カノンは、その小さな部屋のドアを閉じた。


 背後で、扉が閉じる音が聞こえて。
 ルナのペンを走らせる手が、止まった。いつのまにか口の中に溜まってしまった固唾を飲み込む。
 ぱたん、とペンを倒すと、漏れたインクが羊皮紙を汚す。けれど、それにも構わずに、ルナはその手の甲を抑えた。
 とうとう、扉が閉まるよりも先に、口に出来なかった。
「……ごめんね、カノン」
 ――本当に、あんたの親友とやらは、隠し事ばっかりね……
 胸の中だけで、揶揄しながら。
 ルナは椅子の上で宙を見る。
「エイロネイアの、皇太子……」
 ぽつりと、呟いた瞳は、鋭く、その先の天井を貫くほどに、尖っていた。
 ――もし、またあの娘を狙うことがあったら、そのときは……!


 石の床とはこんなにも音が響きやすいものだったのか。
 先ほどからかつん、かつんと上がる自らの靴音を煩わしく思いながら、薄暗い照明だけを頼りに、レンは砦の内を巡回していた。
 別に見回りの任を受けたわけでも何でもない。考え事をするときは、部屋にこもらないのが彼の主義だっただけである。
 ぼんやりと見える石段に彩られた簡素な視界が、頭の中から余計なものを拭い去る。
 シンシアに降りたその日に、カノンとルナの立てた立案は採用された。本来なら、いくらシェイリーンの承諾があったとしても、こう上手くは採択されない。
 シンシアが、どれだけ土壇場に立たされているのかが伺える。
 ルナは資料となる本や書類と共に、部屋に篭っている。バラック・ソルディーア周辺に位置する伝承の地を探索するためだ。
 内戦真っ只中のシンシアが、それらを観光用に整備しているはずもない。ということは、未踏の遺跡を掘り返すような、調査団的な探索になるだろう。
 万が一の場合を考えて、対魔道、対死術の能力に特化したカノンとレンを、調査団内に入れた彼女の判断は間違ってはいないと思う。シリアとアルティオは、留守番なんて、と最後まで愚痴ったが、客将として招かれている以上、誰一人、シンシアの拠点に残らないというのはまずい。シェイリーンの座を妬む貴族院に見立てが立たないし、特にシリアはヴァレスと共に、もう数日で結集する魔道師団の先導をルナから任せられていた。
 魔道師団の動きにエイロネイアか貴族院か、どちらかが気づけば、荒事を招くことも考えられる。そのためにも要人護衛のためにアルティオがいた方がいい。
 数日の間に、ティルスは各地の魔道師団に召集をかけ、シェイリーンは、貴族院に、この作戦の認証を得るため、帰都と演説の準備に追われている。シリアとアルティオはこの護衛も請け負う予定だった。
 ラーシャは何枚かの書状を書いていた。各地の戦地に向けた帰島の連絡だろうか。もう少しすれば、彼女も戦場の最先端に戻るのかもしれない。
 動きといえばそれだけだ。
 しかし、どうにも、どこにもかしこにもぴりぴりとした空気が漂っていて肌に痛い。誰もが、背後から誰かに狙われていて、いきなり背中を刺されないか警戒している。疑心暗鬼を張り付けている。
 これが戦場というものか。だとしたら、とてもじゃないが耐え切れない世界だ。
 レンは疲労の溜め息を吐き出す。
 彼の懸念はそれだけではなかった。
 エイロネイアは、あの黒衣の皇太子は、この程度のことが読めない男だろうか。
 大陸から来訪した一団に、優秀な魔道師が一人、違法者狩りが二人、混じっていて、この二番煎じの作戦が発布されることを予測していなかったのだろうか。
 おそらくは、否だ。カノンやルナだって、それは解っているはず。解っていながら提案を出したのは、とりあえず、エイロネイアと同じ土俵に上がらなければ何も生まれないと考えたからだろう。
 エイロネイア以上のことをする必要はない、と言っていたが、それは嘘だ。あの周到な皇太子は、これくらいのことが読めない男ではない。だとしたら、何らかの対策を練ってくるはず。
 それが何なのかは解らない。しかし、今度は、今度はそれを防げなければ勝ちは、いや、引き分けもないのだ。
 ――シンシア以上に……俺たち自身も詰め、ということだな……。
 そもそもあの皇太子は、何故このゼルゼイルという土地に、自分たちを呼び込んだのか――
 それが、何より解らない。
「……前と、同じだな」
 堂々巡り。答えの出ない問い。答えを出せるのは当人だけだろう。そのときにはもう、きっと手遅れなのだろうが……。
 レンは力なく首を振る。滅入ってしまうより前に、気を張って、神経を研ぎ澄ます。
 こんなことでは駄目だ。自らの役割一つ、こなせなくなってしまう。
 レンにとっては、シンシアの勝利も敗北も、それこそエイロネイアの策謀も、どうでもいいことなのだ。本来なら。
 ただ、止まることを知らない相棒が、親しい友人を慮った結果、こんな場所まで付き合って来てしまっただけのこと。
 エイロネイア皇太子に向ける怒りはあっても、導火線に火がつくまでには至らない。どちらかといえば、火が着きやすい連中を花器から遠ざけて置きたかった。
 ……どこかの、自分に最も近しい無鉄砲者は、特に。
 それでもなお、火に触れてしまったなら。その火に燃え尽きてしまわないように。
 それだけは、己の役目だと決めていた。
 あの誰よりも強く、そして弱い少女が、一人で歩ける日が来るまでは。

『……いつまで、あたしに付き合ってくれるの?』

「……」
 この島を訪れる前、不意に問われた一言だった。あのときは有耶無耶となったが――
 いつまで? そして、それからは? 自らが、遂げたいことは何なのか?
 狩人に従事し、それ故に、それ以外の生き方を知らない。その袋小路に、最も囚われているのは、自分なのだろう。
 そんなものへの、答えは、持っていなかった。
 いつか、彼女と離れる日が来て、それからは、一体彼はどう生きていくのだろう。
 ……答えは出ない。エイロネイア皇太子の思惑なんかよりも余程、質が悪い。だって、答えが"ない"のだから。
 考えたところで、
「……無駄だな」
 思考を切った。そんなことを考えたところで、今は何の益にもならない。妙な迷いが生じるだけだ。
 振り払うように首を振る。肩の力を抜くと、神経が昂ぶっていたのか、疲労感が身体を突き抜ける。
 そのとき、不意に、
「・・・?」
 その音が、聞こえた。


 土の奏でる音色が、耳に届いて、名残を残しながらゆっくりと消える。
 少しだけざらついた感触から唇を離すと、音色は途絶えて、余韻を残しながらもすっきりと消える。ふぅ、と息を吐くと、自然と体の力も抜けた。
 大分、気が抜けていたのか。それとも、彼人がよほど気配を消すのが上手いのか。
 足音に気がつくのが、一瞬、遅れた。
 はっ、として警戒を叩きつけながら振り返る。自然と剣の柄に伸びた手が、視界に飛び込んだ、無表情な顔に止まる。
「れ、レン殿か。すまない。これは失礼を」
「……いや、逆なら同じことをしただろうな。気に止む必要はない」
 返答があったことにラーシャは胸を撫で下ろす。どうもこの御人の鋭すぎる気配と目には馴れない。
 敵愾心、なのだろうか。無理もないかもしれない。思えば、彼は終始、ゼルゼイルに客将として来訪することを良く思っていなかった。
 彼はこちらを、信用も信頼もしていない。
「どうかなされましたか? こんな夜分に」
「――こんな夜分に、随分と風流な音が聞こえたものでな」
「………ああ」
 合点がいった。
「すまない。耳障りでしたな」
「そんなこともないが……」
 ラーシャは手の中の簡素な、素焼きの塊を眺めながら頭を下げた。
 レンがそれを否定したのは本心からだったが、ラーシャはそうは思わなかったのだろうか。罰の悪そうな顔をして、それを懐に、隠すようにしまった。
「オカリナ、か。大分、吹き慣れているようだったが」
「………どうということは。遠い昔、ある人にいい加減に教わった程度です。
 軍人の中には、楽器を嗜む者も多いのです。戦に身を置く者にとって、音楽というのは数少ない娯楽ですから」
「なるほど」
 淡白な頷きを返して、彼はラーシャが持たれていた窓から外を覗き見る。
 黒い森に隔たれていて、月は見えない。僅かな輝きが、存在を表しているだけで、あとは頼りない星明りだけが暗い石の居城を照らしている。
 思えば、珍しい空間だ。向こうがラーシャを嫌っていたのか、不思議なほどにラーシャがレンと話を交わすことは少なかった。あるといえば、以前、機密でルナの手を借りていた際、問い詰められたときくらいだろうか。
 平面状は静かで、冷静な男だが――
「……すいません」
「?」
 唐突にラーシャが口にした謝罪を、不可思議に感じたのか、レンはほんの僅かな、訝しげな表情を作って無言で問い返す。
「貴方方を、この地へとお招きしたことです」
「……」
 彼は尚も無言だった。機嫌は、良くないようだ。
 当たり前だ。そんなこと、謝るくらいなら、最初から彼らに接触しなければ良かっただけの話なのだ。
 けれど、結果的に接触してしまった。そして、こんな深い、戦の根幹を担うような場所に身を置かせてしまっている。
 当初、彼らの手を借りるという案が出されたとき、軍人たちは様々な反応を見せた。
 大陸人の力を借りるなんて。馬が合うはずがない。否定的な意見。
 新しい風は必要だ。外との交流において、アドバンテージを執るべきだ。肯定的な意見。
 ラーシャはシェイリーン側の人間だった。彼女を敬愛しているし、尊敬もしている。だから、基本的には肯定的な立場にいた。けれども、疑念がなかったと言えば嘘になる。
 ――何の非もない人間を、何の所以もないはずの、身勝手な戦に巻き込んでしまっていいものか。
 彼が最初にきっぱりと断ったとき、ラーシャは軽い安堵さえ覚えたのだ。軍人としては失格だ。けれど、何の厭いもないのなら、きっと人間として失格なのかもしれない、と思った。
「……貴女は何のために、軍人をしているんだ?」
「え?」
 思ってもいない問いだった。
「何のために、シンシアへ軍人として身を置いているんだ?」
「……何故、それを?」
「嫌なら聞き流してくれても構わない。だが、何の目的も信念もない人間に手を貸している、というのは些か気に障るのでな」
 ああ、それはとても彼らしい理由だ。不謹慎だったが、少しだけ笑みが漏れてしまう。
 ラーシャは灯りの暗い空に視線を迷わせる。少しだけ、表情をしかめて、短い溜め息を吐く。
「……まあ、そこまで大義ある理由ではないのだが」
「構わん」
「そうか。……退屈な話になる。一個人の、つまらない昔話だ。
 私が騎士としてシンシアに仕官した理由は……私の生家が、代々ゼルゼイルの騎士だったことも勿論、理由の一つではあるのだが」
 言葉を切って、窓辺にもたれ掛かる。浮かんだのは、やるせない憂いを秘めた表情。何故だか、ひどく寂しげな。
「……昔、私には、姉が一人いた」
 昔は、という言い方をした。どういうことなのかは、想像に難くない。
「今は――いない。生きているのかも、解らない。
 昔の私は、泣き虫の弱虫もいいところでな。少し転んだくらいで、まるで世界の終わりでも来たかのように泣き叫んでいた。父も母も手に負えなくてな。いつも姉に甘やかされて、やっと泣き止むほどだった。
 呆れるほど、姉に頼りっぱなしの子供だったよ。私は」
「……」
「でも、姉は、ある日突然、私の前から姿を消した」
「姿を、消した?」
 力なく頷くと、僅かな笑みを浮かべながら、二の腕を抱いた爪に力を入れる。
「……父上の出張中にな。行方知れずになった。当時はエイロネイアに誘拐されたのではないか、という話も流れたが、脅迫も何もなかった。
 当時はエイロネイアとシンシアの関係も、今ほど露骨で深刻なものではなかったからな。冷戦のような状態だった。だからその話もいつの間にか流れてしまったが。
 近くの谷川に落ちたのだとか、森に迷い込んで獣に食われてしまった、とか。
 いくらでも要因が思いつく出来事だった。口さがない連中も多くてな。多数の噂に埋もれて、そのうち捜索も打ち切られてしまった。そのまま……今まで。延々と音沙汰も、噂さえ、何もない」
「……」
「子供だったからな。自分の周りで何が起きているのか解らなくて、また、泣いた。
 でも、今度は慰めてくれる手もなかったからな……。
 そのしばらく後だ。私が、騎士を志すようになったのは」
 かちり、と彼女の腰に下げた剣が音を立てる。胸に下げた紋章が、星明りに嫌に生々しく反射した。
 重い枷を選んだのは、彼女だ。
「思えば、ただの子供の妄想なのだが。姉は今もどこかで生きていると、何の根拠もなく信じて。
 ならば、彼女が帰って来る家を、このシンシアという場所を、守り続けることが私の責務だと……思った。いや、教えられて、それが真理だと思った、だけの話だが」
 窓辺にもたれていた足を退けて、剣の柄を掴む。
「……私にその生きがいとオカリナの吹き方を教えてくれた子も、あっさりと、唐突にいなくなってしまったよ。この時世だからな。生きているのか、死んでいるのかも、解らない。
 それから気づいた。ただ、守られ、教えられているだけでは、共にいたいと思った人は、いなくなってしまうものなのだと。
 ……私は、もう二度と、目の前で誰かを失うのは御免だ。
 そして過去の償いに……このゼルゼイルという地を、美しい国にしたい。姉と、私に真理を伝えてくれたような人が、今、生きているかもしれない。生きたかもしれないこの国を、良い国にしたい。
 戦争が終わったとしても、その爪痕はこの国を苦しめるだろう。私は、その盾となりたい。
 ……それだけだ」
「……」
 自身を軽視するように、静かに、しかし、小さな決意を宿しながら呟いた。レンの顔から毒気が抜ける。レンはずきずきと痛む頭を振り、胸のうちから込み上げる得体の知れないぞわぞわしたものを飲み下した。
「……妙なことを聞いた。すまない」
「いいや、私の方こそつまらない話を聞かせた。まあ、そんな下らない一個人の話だ。気にしなくでくれ」
 ふっ、と彼女は笑う。懐に手を当てたのは、先ほどのオカリナに手を置いているのだろうか。
 ほんの少し、表情を緩ませた後、きっ、と元のように目を尖らせて敬礼をする。
「この度の協力を感謝します。シンシアの名に懸けて、貴方方の想いを無にすることは致しませぬ。
 ……貴方方の身の上は、責任を持って、大陸へお返しいたします」
「……」
 しっかりと、シンシアの、上級軍官の表情で。生きる理由を背負いながら、彼女は背を伸ばして立っていた。
 レンは考え込むように目を伏せる。長い、長い溜め息が漏れた。
 今の彼に、彼女の姿は、どう映ったのか。定かではなかったが。
 彼は、極端的に、「解った」と口にしたのだった。
 出立は、近かった。



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梧香月
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趣味:
執筆・落書き・最近お散歩が好きです
自己紹介:
ギャグを描きたいのか、暗いものを描きたいのか、よくわからない小説書き。気の赴くままにカリカリしています。
★ 目次
DeathPlayerHunter
         カノン-former-

THE First:降魔への序曲
10 11Final

THE Second:剣奉る巫女
10 11Final

THE Third:慟哭の月
10 11 12 13 14 Final


THE Four:ゼルゼイルの旅路
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